黎明の王 白昼の女王
わたしはうしろをふりかえった。ああ日記よ、わたしはいまだに信じられない、わたしの目に映ったものが。そこに立っていたのは、小型のハープを腕に抱い ている金髪の男性だった。体じゅうに小さな布きれをつけていた——髪の毛に、ひげに、服に、腕に、脚に、つま先に、指に。小さなハープにさえ、弦留め上部 に色のついた布が結ばれていた。男性は盲目だった——一目でわかった。目がないのだ。最初から目がない。目があるべきところには、滑らかな皮膚が伸びて、 からっぽの眼窩を覆いつくしていた。
そのかたわらには、革紐でこしらえた一種の武具をまとった赤毛の女性がいた。身の丈ほどの長さの弓を携えていたが、さほどおおきな弓ではなく、わたしの 背丈よりみじかかった。その弓の木の部分には、螺旋模様や、体をひねってからみ合う動物の姿がみごとに描かれていた。腰に彼女は箙を吊るしていた。
p.40 より
イアン・マクドナルドの現時点では二冊しかない日本語翻訳済みの本のうちの一冊。
もう一冊は『火星夜想曲』で、これもレビューを掲載済みなのであわせてご覧いただきたい。というか、わたしのとんまなレビューを読むよりも、まず両書をお読みいただきたい。読みのがすには惜しい傑作である。
この本は、四部構成になっている。
第四部を読んでるときに、横から覗きこんだ人がいて、
「あれっ? アイルランドの森で少女が妖精さんに会うっつー話じゃないの?」
と尋ねられた。
いや、たしかにそういう話でもあるのだが、でも、ちょっぴりフツーじゃないんだよなあ……。
第一部は、よく練られてて、歴史的な考証もおもしろいファンタジー。
第二部は、一部に比べてモダンな感じが多少するけれども、一部同様、筆力のある作家がきちんと組み上げた、って感じのするファンタジー。
第三部は、……これ、なんでわざわざ「部」にしたのかなあ。数ページしかないので、ちょっとびっくり。まあ、二部にも四部にも入れられなかった、ということか。
第四部。読みはじめてびっくり。
でも、なんでびっくりしたかは書かないでおこう。これからお読みになるかたのために、おどろきをキープしておいてさしあげるために。
構成のたくみさ、さいごまで読んではじめて、
「ああ、これはこうだったのか」
と膝をうつことができて、しかも満足できるところに落としてくれることは保証つき。そのほか文章全般にみられる「この作家はさぞかし豊富な読書経験の持 ち主であろう」的な表現の奔流、視覚的イメージのゆたかさと、それを文字に変換する技術のたしかさなど、職人マクドナルドの特徴については『火星夜想曲』の紹介の方にも書いたので、ここではあまりくどくどと言うまい。
ただ実例をあげれば、たとえばこのページの冒頭に引用した部分、語り手である「わたし」が目撃した人物が「身の丈ほどの」弓を持っているのに、その弓が 「わたし」の背丈より短いとさらりと書いているわけだが、この「わたし」がティーン・エイジャーの少女であることから、彼女が目撃した射手の大きさが「ふ つうの人間とはちょっと違う」ことがわかるだろう。そういった、こまかい文章を書く作家なのだ。
もちろん、読みづらい。というか、文章自体が読みづらいわけではないのだが、読みすすめるのに時間がかかるのだ。読みやすさを主眼とし、短い文字数でわ かりやすく単純な情報をまとめる文章に慣れた身では、ともすればもどかしさすら感じるだろう。だが、これは急いで読まずに、じっくり読むべき作品なのだ。 熟読にもたえられる文章で書かれているのだから。
これからのファンタジーってどうやって書いてくべきなのか、真にモダンなファンタジーはどーすりゃ書けるのか、というようなことを、たま〜に、ぼや〜っと考えることがあるのだが。
ある意味で、これはひとつの答だなあ。
と、思わされるような作品である。真似せいと言われても無理だが。
それから、これ、とても個人的な感覚なのでほかの人がどう感じるかはわからないが、SFとファンタジーの境界線上にあるものを、それも「よい」感じで境界線にまたがってるものを読んだな、という気がした。
ちなみに「悪い」感じで境界線上というのは、SFっぽく見せかけておいて、そこはちゃんと説明しなきゃ駄目だろうと思うような部分を適当にごまかしてあ るもの。反対にファンタジーっぽく見せておいて、「それは説明しなくてもいいんだってば」なとこを安直に説明しちゃっているような傾向のもの。どちらもご くごく個人的な分類なので、わたしが「やだなー」と思ったものが、かならずほかの人にも「やだなー」に分類されるとは限らないので、悪しからず。逆に、こ の作品の「よい感じ」も、やはり万人に「よい」と感じられるわけではなかろうという予測もなりたつので、念のため。
さらに説明しておくと、この「よい感じ」の意味は、SFのヒトが、安直な再生産が爆発的に増殖したファンタジーという分野に対して、
「これくらい、やってみせろよ」
的に殴りこんできたというか。こういう殴り込みなら、いくらでもお願いしますな感じなわけで、なんかもう。うまく説明できた気はしないのだが、そういった印象のある作品なのだ。あくまでわたしの根拠薄弱な直感によるものにすぎないのだが。
あ、そういうことなので、この作品は厳密には「SF」の方に分類されるとわたしは考えている。SFのヒトにも、できれば読んでいただきたい。
もっといろいろ書くことがあったような気がするのだが、どうにもまとまらない。なんだか雑然とした感想の羅列だが、とりあえずこんな文章でも、誰かの目にとまって、その人がこの作品に出会えるきっかけになればということで、掲載しておく。
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以上、当時公開していた感想文より。
Dreaming House by *xanadu65 on deviantART
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おとぎ話の中に迷い込んだよう。
Twitter / センバク: 「サンタクロースとほかのまともな神々との唯一の違いと …
「サンタクロースとほかのまともな神々との唯一の違いといえば、大人たちのほうが、このサンタクロースという「神」の存在を信じていないところにある。それなのに、大人たちは、子供たちにその実在を信じさせようとして、あれやこれやの手を尽くして、神秘化しようとしている」(レヴィ=ストロース)
どこからの引用だろうと思って tweet 元を確認。書いてくださってました。
レヴィ=ストロース著「火あぶりにされたサンタクロース」から引用。ここびびっとくる。
引用元がわかるのは、ありがたい。検索してみると、せりか書房●思想・哲学『サンタクロースの秘密』に収録されているようです。
フィギュアスケートの高橋大輔選手のまとめページ@ NAVER
Streetwise by ~John-Genova on deviantART
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ころがり落ちそう。フランス、リヨン。
The Lone Mushroom by =PhotuBug on deviantART
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なんとはなし、寒そうな。
立ち読みボタンを押してみたら、60というのが実に滑り込みな位置だと実感。
本格的なトルコ菓子屋さんの紹介。全5ページ。カダイフ作りの写真にびっくり。こんな作りかたをするのかー!